アート Balloon 1
マニアの皆さまお待たせ致しました。
少しでも笑顔がお届け出来ますように♪
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パンッ
バンッ
バンッ
部屋の中で響く騒音は風船の割れる音。
割り続けているのは道明寺。
何もわざとじゃない。
本人はいたって真剣。
あたしは
耳栓をして真剣なあいつに視線を注ぐ。
「ど…道明寺…そのぐらいにしたら?」
ポンポンとあいつの手を叩けば再び バンッ
メルヘンチックな美作家のリビングで爆音を鳴らし続けている理由は…
『アートバルーン』
「お兄様、芽夢にワンちゃん作って」
「絵夢にはお花」
たわいもない話しで笑っているところへ
風船を持って飛び付いてきた可愛い双子の妹さんたち。
「今日ね、すごかったの」
「本もあるの」
夢子さんと出かけた先での催しですっかり虜になったようだ。
「俺、無理…風船捩じるとかないない。有得ない」
「お兄様、出来ないの?」
「いやだ。ワンちゃん欲しい」
自然と可愛い眼差しはそこに座るあたしたちへと注がれる。
「あ…あたしも無理だよ。やらなくても割れる瞬間が想像できて怖い」
「心臓が痛くなるっていうか鳥肌がたつな」
「なんで今日に限って類がいねぇんだよ」
「何か頼んでたものが出来てそれ取りに行くって言ってた」
「自分で取りにいくなんて珍しいな」
話題がそれると
「ワンチャン」
「お花」
可愛い催促の声が響く。
「貸してみろ」
半ば脅しのように右手を差し出す道明寺。
「お前怖くねぇのかよ」
「プッ風船が怖ぇわけねぇだろ」
「司が問題なのは音とかじゃない。腕だ腕」
「あ?」
不機嫌な声を出し
やれとばかりにあたしたちに顎で指図。
素直に従うのは藁にも縋る想い
何度も何度もF3とあたしが必死に風船を膨らませて待機する。
バンッ
「チッ」
バンッ
バンッ
バンッ
「道明寺…もう耳の方まで顎が痛いよ」
「あぁこれがあった」
美作さんの手には小さな空気入れ。
「早く貸してよ」
笑いながら私はまた空気を入れ始めた。
あまりに割れる風船に双子の妹さんたちも不安顔で
「司お兄様出来る?」
「風船なくなっちゃう」
「あ?」
可愛い妹さんたちにまで睨みつけるするどい視線。
「なくなったら買ってやる」
あいつがそう答えたのは動いた口元でわかった。
わかった瞬間あたしもF3も大笑いだ。
出来るまでやり続けるらしい。
確固たる決意らしい。
あはははは
「司、牧野と手を繋ぐみたいにそっとだ」
「お…おぅ」
バンッ
「ブッ…牧野…お前いつも相当痛いだろ」
「う…うん」
「捩じって割れるわけじゃなくて握り潰してんだよな」
あはははは
耳栓をしているから口の動きを読み取りあってるんだけど
その内容がわかるとみんな身体を震わせて笑い合う。
「司、牧野に触れる時はどんなだよ」
西門さんの言葉に手が止まると
右手が山のカタチに作られ
「//////そ…その手のカタチは何!」
想像できたあたしはボコッと一発殴り
その瞬間また風船がバンッ
「牧野いい感じでいくかもしんねぇから抑えろ」
「う…うん」
そーっと風船をもった道明寺がゆっくりゆっくりと
風船を捩じる。
「オーーッ」
たった一か所捻っただけで歓声だ。
美作さんが本を見ながら
「次はここだ」
「おぅ」
またソーッと捩じり
「オーーッ」と歓声
バンッというわれる音の代わりに歓声が上がり始めた。
「これを二つに折りまげてから捻る」
「こうか」
「ちょっと長さ違うな」
「いやそこまで言ってたら司には無理だ」
ちょっとどころじゃない。
指をさしてるところが捩じれないから笑いたくなる。
だけど割れない事があたしたちの感動を呼んだ。
次は小さくとか
こことここを一緒にとか美作さんのナビ通りに道明寺が捻っていくと
「どうだ」
待ち焦がれていた芽夢ちゃんは大喜び
「司お兄様ありがとう」
「司お兄様ってすごい」
双子ちゃんたちから拍手をされて道明寺も満足そうだ。
だけどあまりに不格好だ。
足の長さが違い過ぎる。
なんて大人の対応が出来る子たちなんだと
絵夢ちゃんと芽夢ちゃんを誉めてあげたい。
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