アート Balloon 2
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「司お兄さま絵夢のお花も作って」
「おぅ。待ってろ」
すっかり気をよくした道明寺
美作さんのナビに従う為にまた風船を手にすると
「おい、これ少し空気入れ過ぎだ」
「抜けばいいじゃん」
「おぉそうか」
本をチラリと見ているあたし達は風船の口を縛るか縛らないかまで
ちゃんと判断していたから笑いだした。
あはははは
捩じる事に真剣過ぎて気づかない事が可笑し過ぎる。
当然結ぶ事が困難なあいつの代わりに美作さんが
このぐらいか?って言いながら綺麗に結ぶ。
「司、ちょっと細かいぞ。いいかここを捻る」
「おぅ」
「次に結び目をもってここだ。ここで捻る」
「おぅ」
風船が割れなくなった事に安心して
あたし達も顔を近づけて覗きこむ。
笑いたいのもからかいたいのもみんな我慢だ。
あいつの手に力が入ればバンッと握り潰す。
さっきよりもずいぶんと細かい作業になってきた。
言われた通りに何の躊躇もなくクルクルと風船を捻り
おとなしく美作さんからの次の指示を待つ道明寺。
その姿だけでも本当は笑いたくて仕方ない。
大きさは違うけれど何とか花びらが6枚出来た事に
みんながホッとした溜息。
次は最初から細かい作業で黄色い風船と緑の風船の結び目を結び合わせるようだ。
なかなか結べない道明寺を見かねたように
「司…そのぐらいなら俺が出来そうだ」
美作さんが取り上げるとあっという間に2つの風船の結びつけた
ウフフフフッ
こっそり身体を震わせて笑った。
あくまでもこっそりだ。
「おい、ここが一番割れる危険がありそうだぞ」
美作さんの言葉であたしたちはまた身体を引いて元の位置へ戻った。
「いいか司、捩じり合わさったこの真ん中のこの小さいとこだ。この小さいとこに黄色の風船を通すんだ」
「お…おぅ」
「司、思い出せ…牧野に入れるみたいにだぞ。そっとだぞ」
ボコッ
「痛ぇッ」
道明寺を刺激しないよう変なアドバイスの西門さんへ無言のアッパー。
そのアドバイスは何!
絶対に面白がって言ってるとしか思えない。
絵夢ちゃんと芽夢ちゃんがいるっていうのに何なの。
そりゃね…わからないようには言ってるけど
いくら何でもひどいでしょ。
だけど道明寺はそのアドバイスが実にわかりやすいらしい。
っていうかまじでやめてほしい。
「お…おぅ」
素直に返事して従うなって…。
いや…ここで失敗しちゃダメか…。
道明寺はアドバイス通りに本当にソーッと中心の輪の中へ黄色の風船を通そうとしたが
「ダメだ。きつくて入らねぇ」
「思い出せ司!」
ボコッ
言わんとする事がわかり過ぎ今度はボディーブロウを叩きつけたが
動きを止めて道明寺も考えないでよ。
「やっぱ多少は強引じゃなきゃ無理だな」
「さすが経験すると違うな」
吹き出す西門さんを睨みつけたけれど
どうにか中心の輪の中へ黄色の風船が通った。
「どうだ」
「すごい!道明寺凄い!」
「司お兄様ありがとう」
絵夢ちゃんが大喜びで抱きつき
「司お兄様が一番ステキ」
芽夢ちゃんも抱きついた。
まんざらでもなさそうな顔をしていたくせに
「お…おぃ離れろ。牧野が怒る」
「は?怒らない怒らない」
「いいから離れろ」
慕ってくれている双子ちゃんを離すと
「おい牧野。俺様を見直したか」
あたしは緩む口元を必死に堪えながらコクコクと何度も頷いた。
リクエストあるか?なんて言い出さない為に
てばやくテーブルの上を片付け始めたのはあたしだけじゃない。
本当ならこんなにも散乱する事はないであろう割れた風船の破片
下に落ちているものまで拾い集めていると
何てタイミングなんだか花沢類がやってきた。
「おぅ類」
「どこ行ってたんだよ」
「あぁちょっとね」
「何だよ。何か作ってんだって?」
「まぁね。でもちょっと直しが必要だった」
そんな会話をしていたが花沢類の視線は双子ちゃんの持った風船へ。
「誰がつくったの?」
「俺様だ」
ふんぞり返った道明寺。
「へぇ。凄いね」
「だろ?俺様しか出来ねぇんだよ」
すっかり有頂天の道明寺だったが
「類お兄様も出来る?」
「作って作って」
双子ちゃんの…
うんうん本当に素直な願いなんだよね。
それはわかるんだけどあたしたちの周りの空気だけは凍りついた。
「早く早く」
本と一緒に風船を手渡すと
「どれがいい?」
「ワンチャン」
うは…。
そんな比較するようなものダメだってダメ。
「あたしはお花」
絵夢ちゃん…
で…出来る限り必死に抑えるけどね?
げ…限界ってものがあるからね…。
道明寺が作ったのはダックスフンド
花沢類が作り始めたのはプードル。
プードルの方がそりゃ何倍もくるくる捻って
難度が高い。
「割れそうで怖いね」
そう言いながらもまったく割れることもなくクルクルと捻る。
チラッと道明寺の顔を見れば
多少感じる焦りの色。
だけどこんなにも簡単に作っちゃうわけ?って思うぐらい
花沢類はプードルを作りあげていき
足の長さだって揃っているからちゃんと立つ。
「う…上手い」
心の中で呟いたつもりだった。
だけど心の中の声は部屋の中へ響いたらしく
西門さんと美作さんの視線があたしを捉え
あたしは怖々道明寺を見ると
青筋がくっきりと見えていた。
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