アート Balloon 3
さてさて・・・波乱は起きるのか?
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やばいと思って急いで道明寺の隣へ座ると
「あんたが作ったのも愛嬌があって可愛いよ」
「だな。やっぱり司のは創造性があるよ」
「お前の描く絵と同じだ」
いや…西門さんそれ誉めてないよ?
ねぇ…それ正しい位置に納まってないって言ってるようなもんだよ?
足の長さが違うって言ってるんだよ?
だけど道明寺画伯には誉め言葉のように聞こえたらしいから
意味がわからない。
すぐに花を作り始めた花沢類…。
なんと植木鉢に入った花だ。
「類お兄様すごいッ」
「可愛いッ」
双子ちゃんは両手で持つと嬉しそうに眺め
「飾ろう」
「うん。可愛いから飾ろう」
…子どもってね…素直だよね。
道明寺の時はそんな事言わなかったよね…
いや飾れないっていうか立たないんだから仕方ないよね。
出窓のところにプードルと鉢植えのチューリップは並んで飾られ
それを見てまた2人で拍手をしている。
微笑ましいよ。
うんとっても。
隣から伝わる冷気さえなかったらとっても和やか。
だけどトコトコと走ってくると
「あたしのワンちゃん返して」
「あたしのお花も返して」
その姿さえ隠してしまおうと証拠隠滅を図っていた美作さんに
妹さんたちは可愛い手の平を出して返却を願い出た。
「い…いるのか?」
「あ?」
美作さん…焦って言葉のチョイスをミスってるってば…。
ドキドキとしすぎて心臓が口から飛び出しそうだ。
「いるに決まってるでしょ。可愛いんだから」
「そうだよ。すっごい可愛いんだから」
絵夢ちゃん芽夢ちゃん。
お兄さんもお友だちもみんな感動で涙が出そうだよ。
何ていい子に育ったんだ。
ホッとしたように美作さんが風船を手渡すと
「あたしが抱っこしてないと立てないの」
「あたしが持ってないと立たないの」
その言葉に笑いで身体が震えそうになったけれど
大事そうに道明寺の作ったブッ細工なワンちゃんとお花に可愛い頬を擦りよせている。
「道明寺…出来る男は人の心を掴むね」
「プッ…やっぱり司の絵と一緒だ。わかる人には愛される」
全身で安堵している美作さんは言葉すら発せないようだ。
嬉しそうにニヤリと笑ってから
「お前を愛してやれんのも俺様だけだ」
ひどい言葉なんだけどそうかもしれないよね。
だってあんたにはあたしがあの絵のように半分赤くて半分青い顔。
それでもって激しくズレていて耳が明後日の方向にあるように見えているんでしょ?
それなのにあたしがいいって言ってくれて
うるさいほど愛してくれてる。
素直じゃなくて強がりばっかり言うあたしの事も
面倒だって言いながら道明寺が折れてくれる事が多い。
何となく可笑しくて
何となく嬉しくて
「ありがとう」
あいつの目を見てそう伝えれば
「おぅ」
とびきりご機嫌な返事が返ってきた。
「司、俺にも犬作って」
そんな甘えたような声で言う花沢類に
あたしたちの口は大きくあいた。
そしてこっそりと耳栓をつけてソーッとあいつの顔を見上げれば
準備は出来たかとばかりに優しい笑顔。
キュンッ
恐怖感の後のこの笑顔は、あたしの中の乙女心をノックした。
「何赤くなってんだよ」
「な…なってないから」
ポンッとあたしの頭に乗せられたあいつの手の重みで
乙女のドアは無意識のうちに開いてしまう。
「道明寺」
名前を呼ぶのは大好きという言葉の代わり。
「帰るか」
風船を置きあたしが頷くのを待っている。
コクリッと頷けば
「類は自分で作れ」
そう言ってあたしの耳栓を外してくれて
風船を持つよりずっと
優しく手を繋いで歩き始める。
「力が強いか?痛いか?」
心配そうに何度も何度も聞く道明寺。
「ううん大丈夫」
答えながらもクスッと小さな笑いが零れて
「あんたの心はいつもあたしに優しいよ」
「お前ぇより大事な物がねぇんだから当たり前だ」
乙女心のドアが閉じるまで
あと僅か数分・・・
「あたしが惚れた男は世界一だ」
「当り前ぇだ」
「神に選ばれし男だからでしょ」
クスッと笑えば
「お前に選ばれた男だからだ」
バルーンよりもっともっとメルヘンチックな世界へ
連れていってくれるのもこの粗暴すぎるぐらい粗暴な男
だけどやっぱりあたしには
「あんたしかいない」
そう言わせちゃうぐらい愛する男だ。
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