eve 59
「さぁevenでなくなるとお叱りをうけますので」
半ば茫然としていた俺に声がかけられた。
不在中にたまっているであろう書類がやけに少ないのは、社長が戻ってきていたという事を現す。
親父に会ったとは牧野は言っていなかった。
まして、一社員が社長室に呼ばれていたら何らかの騒ぎがあり西田の耳に届くだろう。
「社長はいるのか」
俺が気づいているのだから西田もとうに気づいているはず。
「今朝、お発ちになったようです」
何も知らされず静か過ぎるのが不気味じゃねぇか。
そもそも日本に来る予定などなかったはずだ。
西田すら社長の予定を掴んでいないという事が不自然過ぎる。
社長の予定を見逃す事など有得ず急遽帰国するほどの問題すらない。
頭の中を巡る様々な不審点で、なかなか集中も出来ず
進みが遅く感じたがそれでも少ない量を終えるには問題なかった。
定時といわれる時間を1時間ほど過ぎた頃携帯にメールが着信した。
仕事終わったけど道明寺はまだまだよね?
これには、俺に会おうという意志を感じる。
当然嬉しさもあるが、伝えたい事があるという意思表示でもある。
「西田、もう終わりだよな?」
「社長が済ませておいでですので終了でございます」
嬉しいだろ?と言いたげだがやはりどこか不可解なんだろう。
恐らく俺も西田も喉の奥にささった魚の骨みたいに何か引っかかってんのは同じだ。
「地下からリムジンに乗せるぞ」
「承知致しました」
地下駐車場に行ってリムジンに乗れ
念のため奥の方に座ってろ
牧野にメールを送ると俺と西田も執務室を出た。
「小骨が刺さってんだろ」
「えぇ」
「俺もだ」
「ゆっくりとお話を聞いてさしあげてください」
「あぁ」
「決して何を聞いても感情的に動かれませんように」
西田も、最悪のシナリオが浮かぶのだろう。
寧ろそうある事が普通でもある。
例えどんな時であっても西田が何も知らされないという事は有得なかった。
それに愕然としているというのもあるだろう。
「立ち向かう覚悟はお持ちでいらっしゃいますか」
「当り前だ。あまりに静か過ぎて不気味だ」
「仰る通りでございます」
その後は静かにカウントダウンしていく数字を無言で眺めつづけていた。
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不在中に何があった
白紙撤回はやめて
本日12:00に90万ヒットと10万拍手のSSを公開します。
やこ様よりステキな挿絵をいただきましたので急遽執筆
「幸せのカタチ ハートが上手に描ける頃」お楽しみに
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