11 VAMPIRE
薄暗い部屋の中で窓辺に立つ女の肌は月灯りで青白く輝く
月に何かを求めるように細い左腕は伸ばされ指先はそれを待っているのか。
身体を隠すように纏われたシーツ
絹糸のように美しい黒髪が僅かに揺れる。
「つくし」
驚かせないよう小さく声をかける。
まるで何ものかに連れ去られてしまいそうな不安感が名前を呼ばせた。
「何してる」
「月が綺麗だから」
伸ばしていた手をゆっくりと下ろすと恥ずかしそうにこちらを向いた。
纏われているシーツから覗いた細く白い肩
「司もこっちに来て」
招くように俺に向かって伸ばされた腕
ベッドから起き上がりその手を取るとシーツごとつくしを抱きしめた。
出会った頃よりも細くなった躰。
低くなった体温。
俺を虜にした強い瞳までもあの頃の面影は薄れている。
「辛いか…」
「ううん。大丈夫」
身を捩るようにして再び窓の方をつくしは向いた。
「月にうさぎはいるのかしら」
「どうかな」
それを確かめる満月まではまだ遠い。
「もうすぐね」
「あぁ」
俺はそれでもまだつくしとのこの時間も手離せない。
辛さがわかっても楽にしてやりたいと思っても僅かに残るこの温もりに俺はまだ触れていたい。この腕に抱いていたい。
「今夜がいいな」
願いごとなど言ったこともないのによりによって今夜を願うのか。
「愛してるつくし」
「司…愛してるわ」
別れの口づけの後、細く白い首に唇を寄せる。
痛みのないよう優しく歯をたて俺が生きる為につくしの血を飲み干す。
カクンと腕の中で力なく躰を預けたのは共に行くためのつくしとの別れ。
その淋しさをお前は知らない。
ベッドへと寝かせるとお前が選んだ真新しい白いネグリジェを着せてやる。
俺たちの新しい世界へ行くためにお前の前に現れた時と同じ服に着替え
静かに抱き上げるとまだやわらかさのある唇にキスを落とし大きく黒いマントを翻す。
この地から俺はお前を奪うのに何ものかに奪われるのは許せなかった。
永遠に共に生きる為にお前の命を奪った俺と
永遠に共に生きる為に命を差し出したお前。
2人が暮らした家は跡形もなく消えこの地には何も残らない。
愛してると囁きあった言葉のカケラだけが月灯りで照らされているだろう。
~Fin
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こういうのって書いたことがなくて
せっかくだからと書いたはいいが…
もうボツることに耐えた自分に拍手
応援エネルギーお願いしますッ♪
イチブラの更新優先で書いているので短編は不定期でごめんなさい。
いやもう…イチブラ書いたのごっそり消えちゃって昨日から泣き入ってる
10話書いても5日分しかないのでもしかすると来週のイチブラは1回更新かも
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