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幸せのセオリー 50 【完】 & お知らせ



分娩室には道明寺もきてくれた。戦に挑む時はいつも一緒のあたしたち。今までもこれからもそれはきっと変わらない。


「ご主人、奥様を力づけてあげて」
「はい」


こんな素直な道明寺はレア中のレア。
そして


「しっかりいきんで」
「はい」


あたしも素直すぎるぐらい素直だ。憎くないからまだじゃないかと思うのに産まれるという助産婦さんの言葉を信じるしかない。



「はい息んで」
「んーーーー」


自分では思い切りいきんでいるつもりなのにどうも下手なのか疲れ過ぎているのか思うようにいかない。しかもさっきまでは息んではいけないと言われていたのに今度は息めという真逆だ。

さっきまでなら有り難かったが今は心底疲れて果てているせいだと思う。



「次、もう一度頑張りましょうね」
「おい、産んじまえが痛くなくなるぞ」

道明寺の言葉に縋るように首を振る。



「はい息んで」
「んーーーーー」


めいっぱいの力を込めるのに終わりが見えないかのように痛みは続く。



「二人の牧野が頑張らないとな」
あたしの額を道明寺が優しく撫でた。



「はいもう一度息んで」
「んーーーーーー」
「上手上手、頭が見えてきましたよ」


まったく出産っていうのは息めだとか息むなとか言うは易しするは難しの世界だ。


はぁはぁはぁ


意識が遠のきそうな危うい感覚に支配されていたときに

オギャァ



小さく聞こえた我が子の産声。


「おめでとうございます。男の子ですよ」


臍の緒がついたままお腹の上に乗せられ手を伸ばそうとした瞬間、握ったままだった道明寺の手に気が付いた。いつもは綺麗なあいつの手が白いところと赤いところと何だか汚くなっていて


「ご…ごめん」
慌てて謝ったけれど何も言わずに優しい笑みを零し離れた手は我が子に触れる。


「偉いな。お前もよく頑張った」
それは父から息子へとかけた最初の言葉。



「頑張ってくれて有難う」
母となったあたしから息子にかけた最初の言葉。



「これからよろしくね」


ツンツンと頬に指で触れながら言葉をかけた。
ふと顔を道明寺に向けるとうっすらと涙が滲んでいてあたしの手は我が子から道明寺の方へと向かう。それをまたしっかりと握ってくれて黙って首肯した。


処置が終わり病室へと移動した時には、まだ出産という大仕事で神経が興奮状態だったように思う。伝えたいことも話したいこともたくさんあるのにうまく纏まらない。ただ、いてくれるだけでどれほどまでに心強さを与えてくれたかわからない。纏まりのない言葉のままに枕元に座る道明寺に伝えると



「この先も永遠に俺様の愛を思いしれ」
その強制的にも思える強い言葉が何よりもあたしの愛する男らしくて


「すでに思い知ってる」
「全然足りねぇ」

まだまだ溺れるほどに愛情を注ぎたいらしい。
目が合って微笑みを浮かべたあとあたしの瞼は知らないうちに閉じた。どこかまだ体が興奮を覚えているのに疲労感が上回ったようだ。





次に目があいた時にもあたしの傍らには道明寺がいて


「すげぇ可愛いぞ」
見たこともないような表情で笑う。


「どっちに似てる?」
「まだわかんねぇよ。でも稀に見る可愛さは確実だ」


相変わらずの言葉に思わず笑いがこみあげる。髪を梳くように撫でていた手のひらが止まると


「レノンさんたち、こっちに向かってるってよ」
「うは」
「話し合いもこっちですることになんだろうな。丁度いいだろ」

小さく頷くとさらに笑いながら


「親父たちもさっき来て新生児室の前から動かねぇ」
「あたしに用はないわよね」

言いながら自分で大笑いしてしまった。




「諒(まこと)道明寺諒だ」

諒 偽りのない言葉 正直に真直ぐに生きて欲しいという道明寺の願い。



「牧野でもいいのに」
「それは愛称だ」



スマホで撮った諒の写真をあたしへと見せてくれた。確かにまだどちらに似てるのかははっきりとはわからないけれど羨ましいほど鼻が高いのは道明寺に似たんだろう。


すっかり何もいなくなったお腹に触れてそのぐにゃぐにゃ加減に頬が引きつる。これが元へ戻る事は想像しにくいがそれでも元気に生まれてくれただけでわが身はどうでもいいと思えた。




授乳というこれまた初めての経験をしながら母として育てられていく事を感じる。
飲む方も下手ならあげる方も下手で最初はかなり苦戦した。




「ベイビー」


我が子のように愛しむクレアもまた自分の子どもを腕に抱く日がくるだろう。
花沢類たちも見舞いに訪れ


「司みたいにならねぇように育てろよ」
「牧野みたいでもそれはそれで問題ありだろ」
「親はなくとも子は育つっていうから平気だよ」
「ちょっと親はいるから」

怖々と抱きながら代わる代わる写真を撮る姿にも時の流れを感じた。



あたしの入院中に西門家とレノン家の話し合いも行われ西門さんはクレアよりも先にNYへと旅立つ。クレアはあと数か月は茶道を学びその後にNYへと戻ることになった。



予想通り西門さんは新入社員と同じ扱いでの入社となり自分の給料での生活になる。住まいは、あたしと道明寺が暮らしたあのマンションを貸すことにしたと道明寺に聞いた。


「NYに行った時しか使ってねぇしな」


それは、次期家元から一個人としての自立を決めた西門さんへの親友からの餞別のようなものだ。利便性と安全性を考えると安らぐ家ぐらいは整えてやりたいという気持ちだろう。努力をするにしても、生活水準を落とすということは徐々に精神を蝕む。あるものを使うというのはそれこそ節約というものであたしも大賛成だった。



年月とともに幸せのカタチはまたそのカタチを変えた。
あたし達は親となり大切な宝ものをこの腕に抱く。



次期家元から一社員となった西門さんもこれからはビジネス界を生きていく。決して凪の日ばかりではないだろうけどそれでも迷わず進み続けるだろう。



F4と呼ばれた若き後継者たちはビジネスという世界で肩を並べることになった。競い励まし絆を深めながら後世に残るビジネスマンとして君臨し続けようとするのもまた幸せを求めた結果だと思う。



必要であれば何度でも愛する人と共に戦い挑み続ける。
それは幸せを護るために必要ならば迷いもない。


きっとそれがあたしたちの幸せのカタチ、そして紛れもなくあたしたちなりの幸せのセオリー




~Fin

************

相変わらずのここで終わり?!にするririkoです(笑)
2CPをつくしの一人称で書くというのは難しかったぁ
それでもまあクレアたちの着地点を示すという課題はクリアできたように思います。
司くんの愛も思い知りました(笑)

最後までお付き合いいただき有難うございました。
これにてl‘oiseau bleu 完全完結でございます。
お休みではなく本日の更新を持って二次を辞める事に致しました。


暫くサイトはこのまま置いておく予定ですのでお気に入りの作品がひとつでもあればまたお楽しみいただけると嬉しいです。今後はまた元のオリジナルの方に戻って集中して書いていきたいと思っています。執筆名も違うのですが作風は変わらないのでどこかであれ?という偶然の再会があるかもしれません。まぁ暫くは閉塞感が残り聞こえの悪くなった左耳の完治を目指します。
ではいつの日か偶然にお逢いするかもしれない日を楽しみにしております。


長い間l‘oiseau bleuにご訪問いただき有難うございました。
皆様に感謝を込めて
140万アクセス本当に有難うございます
2016.12.9

*ririko*


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